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工業の花 ---- 『工業唱歌』
工業の花
一、
千變萬化かぎりなき、
自然の不思議に驚きて、
及ばぬものと恐れしは、
過ぎし昔の人ごころ。
二、
今は宇宙の現象も、
其の理を究め使役して、
我が人生の利器と為す、
文明開化世のすすみ。
三、
陸には鐵道網張りて、
千里の道も遠からず、
海には船舶波を 蹴て、
海外萬里も皆となり。
四、
トンネル山に貫き通し、
つり橋河に架けわたし、
自然の障りもゆめとのみ、
消えゆく人智の大進歩。
五、
雲間を照らす 電も、
用いて我手の物とせし、
電燈・電話・電信機、
ただ是れ学理の賜物ぞ。
六、
かくまで月日にすすみなば、
空飛ぶ舟も作られて、
雲より雲に旅行する、
道ひらけんも時の間ぞ。
七、
海陸武器のたたかひも、
実業平和の戦も、
勝敗ひとへに工業の、
力を仰ぐ今の時。
八、
胸の勲章、手の指輪
身に着る織物染物も、
何れか益ある技術者の、
咲かせし誉れの花ならぬ。
九、
國の盛衰、世の栄枯、
全力その手に支配する、
工業技術の未来こそ、
思へば社会の勝利者ぞ。
十、
よしや油に塗るとも、
よしや薬に汚るとも、
天下の進歩を掌中に、
握る身こそは愉快なれ。
十一、
いざ我友よ、諸共に、
この快楽と名誉ある、
工業世界に身を立てて、
理想の天地を作るべし。
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