19世紀におけるヨーロッパ音楽包括する重要な言葉、時代区分。古典期の次に位置する。
「ロマン romantic music」は、同時代にヨーロッパを覆った新しい文芸の流れと密接な関係を保ちながら発展し、ドラクロワやセザンヌらの画家たち、ニーチェらの哲学者、ゲーテやゾラなどの文学者と時代の風を共有した音楽だった。
ロマン派の音楽家たちは、人間らしさを追求し、市民社会という理念に裏づけられた自由な感覚、個性を重要視した。また19世紀の後半ともなると、ロシアや北欧、スペインなどの民族主義・民族的特質に根ざした作品が次々と生み出され、音楽家の視野と意識が各段に広がった時代でもあった。
ロマン派の最初の一作としてはウェーバーのオペラ『魔弾の射手』(1820年)が挙げられる。その後、
シューベルト、メンデスルゾーン、
シューマン、ブラームスらが名作を生み出していった(初期ロマン派)。
音楽的な作風としては、組曲や1楽章形式の曲が、交響曲よりも好まれる傾向にあり、
ショパンもピアノの小品を量産している。
「新ロマン派」と呼ばれるベルリオーズやリスト、そしてワーグナーらは「標題音楽」を、リストは標題(プログラム)を作品のイメージの中心とした新しい「交響詩」という形式を生み出した。
ワーグナーはまた、オペラの発展系ともいえる「楽劇」を作り上げ、彼のこういった活動は後の作家たちに圧倒的な影響を及ぼすことになった。その代表例がブルックナー、マーラーらドイツにおける「後期ロマン派」や、
チャイコフスキーやムソルグスキーといったロシアの作家たちの活動だった。
またロシア/スラブ人の間で高まった民族意識は上記に代表される自国の音楽家だけでなく、北欧のシベリウス、ボヘミアのドボルジャークらをも鼓舞し、20世紀につながる各民族、各地域の文化土壌に根ざした音楽を生み出すことになった。