著者からのメッセージ
新刊『竹田の子守唄 名曲に隠された真実』の上梓を、お報せします。
多くの人たちの証言を得て、ここにようやく、たくさんの逸話を持つこの歌の成り立ちから現在までを、まとめることができました。
お手に取っていただき、添付のCDと共に「竹田の子守唄」の世界を知っていただければ幸いです。
本書は、一九七〇年代初頭、フォーク・グループ「赤い鳥」が大ヒットさせた美しい子守唄が、その後しばらくして、なぜ「放送禁止歌」となったかを追うことからストーリーが始まります。
「被差別部落にルーツを持つ」というだけで、「竹田の子守唄」は、ごく最近まで放送やCD・レコードなどのメディアには、なかなか登場することはありませんでした。本書は、歌が故郷を出て、急速に(形を変え)広まっていく姿を、またそこに発生した問題を、的確に紹介しようとしています。
さらに本書は、地元(京都)の歴史的な背景を語り、独特の世界を持つ「守り子唄」を生み出した小さな労働者(子ども、若い女性)が近代日本においてどのような位置にあったかを、歌を中心にすえながら、とらえようとしました。
「たった一つの歌」の中から、これほどまで生々しい肉声が聞こえてくる。そしてこの歌が、地元の女性たちによって「誇るべきもの」として息づいている。
これまで音楽を仕事としてきた私ですが、「竹田の子守唄」は、感動の歌であると同時に、気がつけば歌とは何かを教える「教師」ともなっていました。
心をこめて書いたつもりです。よろしく、ご高覧ください。
藤田正