春は來れり .... 三角錫子/室崎琴月
春は來れり
三角錫子
一、
凍れるつららいつしか解けて
野がはの芹も早すんにつみ
をのへの 霞野邊のいとゆふ
春は來れり天地かけて
二、
花の 脣いつしかとけて
緑なすかみたけに餘り
鳥の鳴く音に心をどりて
春は來れり乙女の胸に
三、
手折りははてじ花の技
なれし宿りの鳥なかむ
おぼろの月のうらみより
その夜くだちね春の雨
四、
ことは空しくねをたえて
今はた忍ぶ彼一人
ああその夜はの梅が香を
ああその夜はの月かげを
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