明治42年5月(1909年)
『
中等唱歌』
湖上の月
Gioacchino Antonio Rossini
(1792年〜1868年)
メロディを
ロッシーニの「ウィリアム・テル」から取り、
吉岡郷甫(きょうほ)が詞をつけた。静かな夜の湖に舟を出し、友と語らい歌うというのは、郷甫が作詞した明治や大正時代における学生たちの文化をバックグラウンドとしたものであろう。一見、ロマンチックではあるが、夜の静けさに持ち込まれた「バンカラ学生」たちの、高らかな声(高歌放吟)が聞えるようである。
このような文化から出た最大の「ヒット」が、旧制一高・東寮の寮歌「嗚呼玉杯に花うけて(一高第十二回記念祭寮歌)」(明治35年)だった。
吉岡郷甫は、東大を卒業し、その後、旧制五校(熊本大学)の学長などをつとめた人物。