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作曲白秋民謡集「玄海雜曲」 北原白秋
玄海雜曲
1
瀬戸は、「 乗り 出しまつしよかね。」
早鞆、
疾風で 通よや、
「ちらちら 燈は
下の 關。」
汐は 一汐、
帆は 輕るい。
「お 月さんも 一寸と 出て 門司の 岬、
ハイ、 今晩は。」
2
海の、「お 出でましたかね。」
中道、
ふつりと 絶えて。
「あちらは 玄海、
こちや 博多。」
波はかたの 島、
離れ 島。
「お 月さんが 一寸と 出て 松のよこ、
ハイ、 今晩は。」
3
芥屋の、「お 出でましたかね。」
大門の
汐漚なれば、
「 戻るにや 戻れず、
浮ばれず。」
果てはしら 波、
闇の 泡。
「お 月さんがちらと 出て、 岩の 外、
ハイ、 今晩も。」
4
沖の、「お 出でましたかね。」
小島か、
裏向き 島か。
「 紅い 襷を
一寸と 投げて。」
小燒、 朝燒、
すぐ 燒ける。
「 燒けるなら 燒けなはつても、こんがりと、
サア、また 來たね。」
5
岸流、「お 出でましたかね。」
島かよ、
十六むさし。
「 賭博は 好きなり、
酒は 飮む。」
つまりや、 身のはて、
波のはて。
「お 前さんの 兩刀づかひにやかなやせぬ。
ハア、こりこりだ。」
6
博多、「お 出でまつしよかね。」
しぼりか、
小倉の 帶か。
「 狐は 啼き 出す、
雨はふる。」
とても、 久留米の
紺がすり。
「おこんさんが 一寸と 出て 萱のかげ。
ハイ、 今晩は。」
7
誰を、「お 出でましたかね。」
呼ぶやら、
呼子の 瀬戸で、
「 港は 何處じやと
平戸船。」
波に 千鳥が
ちりちりと。
「お 星さんがチラチラと 浪のかげ
また、 今晩も。」
8
九十、「お 出でましたかね。」
久島の
數ほど 通よて。
「 今宵は 百夜さ
ただ 一目。」
呼べど 呼子の
はぐれ 鳥。
「お 星さんがチラチラと 浪の 外、
また、 明晩も。」
これもおなじく博多ぶしである。
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| 作曲白秋民謡集 北原白秋著 |
作曲白秋民謡集
發兌 改 造 社
昭和4年(1929年)2月3日発行
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