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吉野山 ---- 吉岡郷甫/小山作之助
明治42年(1909年)5月31日 発行
『 中等唱歌』
吉野山
吉野山
吉岡郷甫
一、
麓も 峯も 咲きうづむ
花の 白雲立ちなびく
吉野の 山の 曙を
唯うるはしと 見る 勿れ
「こヽにても 雲居のさくら 咲きにけり
唯かりそめの 宿とおもふに」
御階のさくら 徒に
昔に 歸る 春待ちし
涙のいにしへ 思ひ 酌めよ
二、
千本の 花を 掃き 捨てヽ
白き 嵐の 吹きさわぐ
吉野の 山の 夕暮を
唯くちをしと 見る 勿れ
「かへらじとかねて 思へばあづさゆみ
なき 數に 入る 名をぞ 止むる」
縄手の 風のはげしくて
若木の 楠の 折れたりし
涙のいにしへ 思ひ 酌
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