沖縄の伝統歌としては、八重山の「トゥバラーマ」、宮古の「アヤグ」とならぶ、代表的な名歌の一つ。「ナークニー」とは、「宮古島にルーツを持つ歌」という意味だと言われている。つまり、沖縄本島に伝えられた「宮古(ミャーク、マーク)の根(ンニー)」の歌が、本島の中北部を中心に広まっていったのだ、と。
「ナークニー」は、「毛遊びー」と呼ばれた若い男女の野遊び(歌垣)で培われた即興歌である。楽譜を見てもわかるように、西洋的な起承転結もなく、表現として腰を落ちつける箇所もない「ナークニー」は、歌い手が感情を充分に表わすことがとても難しい。三線を持って自由きままに歌えばいい、という大前提があるものの、それは力足らずの者にとっては自分がどう歌えばいいか頼りになるものがないということでもある。
ゆえに「ナークニー」は、本島系の伝統的大衆歌謡の中で最後の到達点と言われ、独自のスタイルを作り出した人には「富原ナークニー」など、個人名をつける場合もあった。同様に、この歌からは、無数のバリエーションが今も作られ続けている。
ここに紹介した歌詞は、ごく一般的なものの一つ。「もう昔のことになった恋物語だが、私の心は今も燃えている。忘れることができようか、あなたから受けた情愛を」というのが一番。このほか、さらに濃厚なラブ・ソングもあり、また教訓的な内容の歌詞もある。「ナークニー」のあとは続けてアップ・テンポのダンス曲を歌い、みんなで舞い踊る。
ナークニー
沖縄民謡
昔ぐとやしが
肝や今までんヨ
忘りがたなさや
ありが情
共に眺みゆる
人ぬ居てからやヨ
ぬゆで照る月に我んね
向かて泣ちゅが
昔語らたる
夢やちゃん見りばヨ
しばし慰さみん
なゆらやしが
志情ぬくちゅみ
浮世ある間やヨ
たとい音信や
までにあてん