あられ ---- 大和田建樹/上真行
あられ
大和田建樹
一、
芝生に 落ちて 走り 舞ふ
いきほひたけき 玉霰
ふれふれ 白くつもるまで
あなはや 色は 消えうせぬ
過ぎし 名誉の 花に 似て
二、
ただよひうかぶ 池水の
落葉にをどる 玉あられ
しばしとまりてなほ 遊べ
あなはや 波に 消え 失せぬ
定めなき 世のさまに 似て
三、
おぼろ 月夜にちる 花の
すがたを 見せてふる 霰
ひろひあつめて 贈らんと
受くる 袂に 消え 失せぬ
戀しき 人のかげに 似て
四、
空にたゞよひのにさけび
まろびくじけてふる 霰
勝も 負けるも隔なく
同じ 枕に 消え 失せぬ
わかき 心の 慾に 似て
五、
松の 末葉をいのちにて
わづかにのこる 玉霰
くぎりしをりの関の教り
いづこの胸は眠るらん
童あそびの夢に似て
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