謡ひて謝せよ ---- 大和田建樹/上真行
謡ひて謝せよ
大和田建樹
一、
朝霞まだ 夜をのこす
谷かげのさびしき 空に
誰かまづ 春をいざなふ
うつくしきたゞ 鳥の 歌
二、
雲ふかく 里へだゝりて
友とほき 旅路の 暮に
憂きこゝろたれなぐさむる
いさましきたゞ 水の 歌
三、
鳩車ひきつかれたる
をさなごを 夢に 送りて
誰かそのねむりを 守る
愛ふかきたゞ 母の 歌
四、
人の 世のはかなきねがひ
浮き 沈み 身をおほふ 時
胸の 火を 誰かしづむる
清浄のたゞ 神の 歌
五、
おもへ人 耳にわかれて
うまれなん 世はいかならん
もろともにうたひて 謝せよ
世にあまるあゝ 神の 恩
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