大正13年(1924年)『コドモノクニ』1月号
あの町この町
「境界」に対して強い意識を持ちつづけた雨情らしい「恐い歌」。
「逢魔が刻(おーまがとき)」という言葉がある。日中から夜へと変わる、その境界にあたる時刻がそれで、オニがさらっていくやも知れず子どもを外に出しておいてはいけないと言われた。こういった民俗の記憶を、とても大事にした詩人が雨情であり、「あの町この町」は、その傑作と言ってもいいだろう。2番目の、帰ろうとしているはずなのに、家が遠くなっていくという部分が秀逸。そして主人公の周りを夜が取り囲む。