大正14年(1925年)1月号
『コドモノクニ』
雨降りお月さん
雨情詞の典型ともいえる、現代の視点からすれば「不気味」とすら思える内容の童謡。 雨情は、童謡は童心性の表現であるがゆえ、子どもの生活、姿が正しく表現されていれば作り手が大人であろうとかまわない、と言っていた。そして童心とは良心のことなのだ、とも説いた。童謡運動の筆頭に位置し数々の名作を残した雨情にとって、「童心=良心」の表現とは、たとえばこの「雨降りお月さん」だった。
雨降りで見えぬはずの月にむかって、嫁に行くときは誰と行くのか? という語りかけで始まる「雨降りお月さん」は、雨情が再発見に努めた日本の自然・土俗(それは童心なるものが落ちつく場所)の重要な一部分である子どもに、何を伝えようとしていたかが、ほの見える傑作である。
なおこの歌の初出は『コドモノクニ』(1月号)だが、同年3月号に「
雲の蔭」という別の作品が発表されている。この二つを、くっつけて改めて「雨降りお月さん」としたらどうか、というアイデアを出したのは作曲の中山晋平だった。後者は、以下のような歌詞で、メロディも前者とは微妙にことなるものが使われている。
関連曲:
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雲の蔭 --- 野口雨情/中山晋平