乙姫さん
本居による軽快なメロディに、ぴったりと寄り添っているような雨情の詞ではあるが、よく考えてみると龍宮城のお姫様が、浦島太郎と一緒になって千年も万年もハタを織り続けるという発想が凄い。いわゆる「浦島伝説」を、まったく別の視点から眺めた詞なのかもしれない。
あるいは、雨情がかつて訪れ「水と筏を堀川橋の石の手すりは見て暮らす」と詠んだ日南・油津の堀川運河と関連があるのかもしれない。堀川橋は、俗称「乙姫橋」とも呼ばれ、そのたもとには吾平津神社がある。この神社は、もともとは「乙姫大明神」といい、近隣の人々は今も親しみを込めて「乙姫さん」と呼んでいる。