大正9年9月1日(1920年)
『「赤い鳥」童謡 第三集』
月夜の家
幽霊屋敷をテーマにしたような歌。月夜に鳴る壊れたピアノ、怪しく光る二つの目(?)…と、夏のキモダメシの歌とも言える。伴奏も、幽霊が飛んできたかのような、奇妙な音を立てている。
目の見えない人のツエの音から深夜のイメージをふくらませてゆく「真夜中」や、母がいないから寂しいと金魚を殺す「金魚」などと共に、怪奇的な闇の世界を色濃くにじませた歌。
白秋にとっては、大正8年、「真夜中」や「どんぐりこ」などと共に書き上げた作品だった(天神山伝肇寺・「みみづくの家」の時期)。
ちなみに「真夜中」は、「小盲目(こめくら)、盲目(めくら)、杖ついた盲目~」と、今の時代からすれば考えられない差別的な言葉でつづられた歌である。