大正11年6月15日(1922年)
『「赤い鳥」童謡 第六集』
雀のお宿
白秋には雀をテーマとした詞、歌集は多い。「舌切雀」、この「雀のお宿」、歌集『雀の卵』、詩文集『雀の生活』がそれである。
白秋は大正7年から雑誌『赤い鳥』に関わり、その前後、東京の小岩や小田原に居をかまえ創作活動に励んだ。しかし生活は苦しく、彼は雀というごく身近な生き物を通して自己を見つめるようになっていった。「雀のお宿」は、そんな彼の心理を映し出した作品の一つである。
よくまとまった作品で、この歌からかもし出される「懐かしさ」は、多くの日本人にとって「歌の原点」と感じるもの。そういう点でも、白秋や草川ら大正期の童謡作家が果たした功績は大きかったと言えるはずである。